健康診断の結果を生かして健康に役立てましょう!
精度の高い健康診断や人間ドックを受けても、結果をしっかり理解して、適切なフォローを行わなければ将来の健康に役立てることはできません。ただし、予備知識なしで結果を見てもわかいにくい部分が多いため、出てくる言葉などについてこちらでご説明しています。
健康診断で「異常」「要精密検査」と指摘が!
この言葉だけで深刻になる必要はありませんが、たいしたことはなさそうと油断してしまうのも禁物です。内容をよく確認して、どんな対処法が必要なのかしっかり判断してください。
結果の判断
結果にはさまざまな数値とともに、「異常なし」、「要経過観察」、「要精密検査」、「要治療」などが記されています。この言葉が意味することを正確に把握することが、適切な対処には不可欠です。
異常なし
正常範囲であり、問題がないことを示しています。
要経過観察・要再検査
正常範囲ではありませんが、緊急な受診は必要ない状態です。ただし、この段階で生活習慣を改善することはとても重要です。できれば医師の診察を受けて、数値を正常範囲に戻し、将来的な病気の予防につながる生活習慣改善のアドバイスを受けてください。当院では、ライフスタイルやお考えに合わせて、無理のない範囲での生活習慣改善をサポートしています。
要精密検査
健康診断の検査では特定できない病気の可能性があるため、さらに詳しく調べる必要がある状態です。精密検査を行ってみたら異常がないとわかることもよくあります。必ず受診する必要はありますが、深刻に受け止める必要はありません。
要治療
治療が必要な状態ですので、すぐに専門医を受診しましょう。健康診断でわかる病気では生活習慣病が多く、そのほとんどは放置してしまうと動脈硬化が進行してしまいます。また、どんな病気であっても早期に適切な治療を受けることは症状の進行防止に効果的です。できるだけ早めに受診してください。
ご注意 人間ドックの腫瘍マーカーについて
腫瘍マーカーはすでにがんになった方が、治療効果や再発の有無を調べるために受ける検査です。腫瘍マーカーは蛋白や酵素などの急激な増加が起こっていないかを調べるものですので、がん以外の原因で数値が上昇してしまうケースがあることから、あくまでも目安にしかならず、確定診断のためには精密検査を受ける必要が出てきます。それならばはじめから年齢などのリスク要因に合わせた各種の精密検査をオプションで組み込む方が格段に役立ちます。
ただし、前立腺の腫瘍マーカーなど、健康診断や人間ドックに組み込んで効果の期待できるものもいくつかあります。そこで当院では、組み込んでもあまり効果のない腫瘍マーカー検査はおすすめしていません。
個々の検査について
メタボリックシンドローム
生活習慣病である高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)のうち複数が合併しており、内臓脂肪が過剰に蓄積された状態です。それぞれの生活習慣病がまだ治療の必要がないほど軽症でも、合併することで動脈硬化の進行が早まり、脳出血・脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが大幅に上昇してしまいます。「メタボの指摘を受けたけれど、それぞれの数値はそれほど悪くない」と油断してしまうと危険ですから、必ず専門医の診断を受けて適切な治療をできるだけ早くはじめましょう。
血圧
高血圧症は、1度の血圧測定だけで診断されるものではないため、健康診断で高血圧が指摘されたらきちんと診察を受ける必要があります。ただし、健康診断などで血圧を測ると、通常より高い血圧になってしまうことはよくあります。これは緊張などにより、測定時の血圧が上昇してしまうことから起こります。高血圧症になると、血管が絶えず負担を受けて動脈硬化、脳出血・脳梗塞、心筋梗塞などのリスクを上層させますので、ご自宅で安静時に何度か血圧を測って正常範囲内の場合には、その結果を持参して受診することをおすすめします。
血糖値
糖尿病は血糖値が高い状態が続く病気で、血管が絶えず負担を受けて動脈硬化、脳出血・脳梗塞、心筋梗塞などのリスクを上昇させます。また、毛細血管に大きな悪影響を与えるため、失明や足指の壊死、透析治療が必要になる腎機能障害などの合併症を起こす可能性もあります。
自覚症状がなかなか現れないことが多いため、健康診断で糖尿病がわかったらむしろ早期の治療が可能になり、重大な合併症を起こすことなくコントロールしていけるケースも多いのです。早めに受診して適切な治療を開始してください。
コレステロール
善玉と悪玉のあるコレステロールでは、悪玉のLDLコレステロールと中性脂肪が動脈硬化を起こし、善玉のDLコレステロールは動脈硬化を防ぎます。脂質異常症では、悪玉が多い高脂血症の他、善玉が少ないケースでも動脈硬化を起こしやすくなり、脳出血・脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが上昇します。それぞれの数値だけでなく、バランスが重要になりますし、他の生活習慣病の有無も大きく影響するため、定期的に検査を受けながら、しっかり改善していくことが重要です。
尿酸値
尿酸値が高いと血管や腎臓に大きな負担をかけるだけでなく、激しい痛みをともなう痛風発作を起こす可能性があります。これは血液中に増えた尿酸が結晶化して起こります。尿酸は飲食物に含まれるプリン体から作られますので、「プリン体が多いビールだけ控えれば大丈夫」と思っている方がいらっしゃいますが、これは間違いです。ビール以外のアルコール飲料にもプリン体は多く含まれており、また多くの食品にも含まれています。適切な尿酸値のコントロールを行うためには、やはり受診が不可欠です。なお、治療ではプリン体のあまりにも多い飲食物を控える程度の制限は行いますが、それよりも摂取する総カロリーの制限、適切な運動、十分な水分補給、そして薬物療法などが重要であり、その中から適切な治療を選択していきます。
肝機能
肝機能障害は、アルコール、肥満、薬の影響、そしてウイルス感染など、さまざまな原因で起こります。そのため、健康診断で肝機能障害を指摘されたら、どんな原因によって起こっているのかをまず確かめる必要があります。肝機能障害を起こす病気の中には早急な治療が必要なものもあります。また、肝機能障害が進むと、肝臓に行くはずだった血液が行き場を失って胃や食道に静脈瘤を作る可能性があり、これが破裂してしまうと命にもかかわります。できるだけ早めに専門医を受診してください。
貧血
鉄分不足によって起こるイメージがあると思いますが、消化器など体内で起こっている出血が原因となって貧血を起こしていることもよくあります。貧血を起こすほどの出血がある場合、それはかなり危険な状態です。そのため、貧血がある場合には、内視鏡検査で出血がないかを調べることが重要です。
尿検査(血尿・糖・タンパク質)
尿に何らかの異常がある場合、尿路感染症、尿路結石、腎機能障害、腎炎、糖尿病、腫瘍などの可能性があります。突然、強い痛みなどの症状を起こす疾患や無症状で進行していっていつの間にか重篤な状態になってしまう病気が多いため、異常を指摘されたら必ず受診して詳しい検査を受けましょう。ただし、尿は前日や直前の飲食物や行動に大きく左右されるため、健康診断の尿検査で異常を指摘されても、精密検査を行うと異常がないケースもあります。
心電図
心臓の働きを調べる検査であり、不整脈の他、虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)、心臓自体の異常(心筋症や心肥大など)の可能性がありますので深刻になってしまう方がいらっしゃいます。精密検査をしてみると緊急に治療が必要なこともありますが、経過観察だけで当分は大丈夫ということもあります。それを判断するためにも、必ず早めに専門医を受診しましょう。さらに、心電図に異常があり、息切れや胸の痛みといった症状がある場合はすみやかに受診してください。